Sプランニング ブックレットシリーズ4 シカゴの夜から六本木の朝まで ──対抗軸を打ち出せるのは知的障害── 野沢和弘・大石剛一郎・堀江まゆみ著 A5判 155ページ 1100円(税込) 警察プロジェクト、熊谷事件、日本グループホーム学会など社会を変えるためにエネルギッシュに走り続けた5年を振り返り、次の10年を展望する待望の「てい談」 ■ 私たちはこのてい談の中で、市場至上主義と言われる現在の日本社会を憂えているが、実は、それに対抗するのに十分な機能を発揮できているとは言えない研究や司法やメディアの・・・・ |
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第1章 六本木の夜 第2章 システムの国の裁判 第3章 シカゴの衝撃 第4章 警察プロジェクト 第5章 熊谷事件と浅草事件 第6章 研究とは何か 第7章 グループホーム学会 第8章 社会は変えられるか ●野沢和弘「おわりに」より● 警察プロジェクト、熊谷事件、日本グループホーム学会など社会を変えるためにエネルギッシュに走り続けた5年を振り返り、次の10年を展望する待望の「てい談」 ー議論の縦軸は「時代」であり、横軸はそれぞれの専門領域での「仕事」であるが、本書のメインテーマは「知的障害」だ。 私たちはこのてい談の中で、市場至上主義と言われる現在の日本社会を憂えているが、実は、それに対抗するのに十分な機能を発揮できているとは言えない研究や司法やメディアの現状を憂えているのである。 それは、知的障害のある人たちにかかわることで、自分が愛着をもっている仕事のありのままの姿が映し出されるのが見えるからではないのか。 シカゴでの研修を起点にして、その現状の突破口を模索してきたのがこの5年余りの活動だった。その一部は成功したが、かなりの部分はいまだに糸口を見つけられずにいる。「対抗軸を打ち出せるのは知的障害者」。てい談を終えた今、改めてその通りだと思う。それは、殺伐とした成果主義、格差社会の冷たさに対して、知的障害にかかわることでありのままの自分を再発見した私たち自身が対抗軸を打ち出さなければならない、ということにほかならない。 ●『手をつなぐ』書評らん 掲載 『シカゴの夜から六本木の朝まで』 P&A-大阪代表 辻川圭乃 本書は、野沢和弘、大石剛一郎、堀江まゆみの3氏による「てい談」である。「てい談」とは、広辞苑によると、「3人が向かい合って話をすること」とある。なるほど…。2人だと「対談」で、4人以上なら何というのであろう。 3氏は、新聞記者、弁護士、そして大学教授と異なる職業を持つが、共通するのは世代と、知的障害のある人たちの権利擁護と地域生活に向けての取り組みへの情熱である。その3人が、シカゴの夜から始まって、如何にして、何を想って「警察プロジェクト」、「グループホーム学会」などを推し進めてきたかが、非常に親しみやすく、かつ、熱く語られている。 本書の中に、「親がやるべきこれからの目的は権利擁護だと思っていた。ただ何をすることが権利擁護なのかわからなかった。でもこれは具体的でよくわかる。これだと思った」というくだりがあるが、3氏が目指して、全力で取り組んできたものは、誰でも参加できる等身大の権利擁護である。今まで、一緒に取り組んできた人はもちろん、これからやってみようかという人も、ぜひ本書を読んで、現在に至る流れがどうして起きたのかを知っていただきたい。「よし、出来るところからやってみるか。」と元気が出ること請け合いである。 わかりやすいタイトルに比べ、「対抗軸を打ち出せるのは知的障害」のサブタイトルは一見すると意味不明であるが、きっと本書を読み終えたら、各人それぞれの解釈に行き着けることと思う。殺伐とした成果主義や格差社会が広がってきた現在であるからこそ、対抗軸を打ち出せるのは知的障害なのである。
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